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引き寄せの法則
新しい引き寄せの法則
高層ビルの最上階の一室、そこはⅠ氏の重役室である。Ⅰ氏は一人窓べに立ち、はるか下方の交差点を眺めている。
信号が変わる度に、今まで待っていた側の、車や人間たちが一斉に動き出す。小さな車の波と、まめ粒のような人間たち。十字路の縦横を、交代で整然と、その動きを繰り返している。
思えば、十年以上前、この風景を、Ⅰ氏はイメージの中で思い措いていたのだった。当時、二十台の後半、Ⅰ氏はごく普通のヒラの会社員だった。
それが、イメージングに巡り合い、その考え方に熱中した。そして、「観想」と呼ばれるイメージ・トレーニングに励んだ。そのイメージの一つが、この、はるか下方に見える交差点の風景なのである。
Ⅰ氏は、高層ビルの重役室に立つ自分の姿を想像したのである。そして、この観想は飽く事なく、いつも繰り返された。突然、勤めていた会社が倒産した。
ところが、昔の仕事上の先輩に逢い、ある食品会社に転職することになる。折しも、この会社は、豆腐や蒲鉾などの日本食品をアメリカへ売り込もうとしていた。
運よく、Ⅰ氏はアメリカに留学したことがあり、英語が堪能だった。彼は一年の内、半年以上家を留守にして、アメリカ中を飛び回った。その甲斐あって、その会社の日本食品の売上げは目覚ましく増大した。
やがて、彼は遂にその会社の広告部の部長を担当することになったのである。その後、何回かの昇進があり、Ⅰ氏は取締役の役職まで得て、重役室に納まったのだった。
そして今実際に、はるか下方の交差点の風景を見下ろすこととなったのである。